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特集・コラム

糖尿病について 原土井病院 総合診療科 髙瀨 慶一郎

糖尿病とは

糖尿病とは、膵臓から分泌される血糖を下げるホルモンであるインスリンの作用不足により発症します。

診断は血液検査にてなされ、血糖値、HbA1c(1〜2か月の血糖値の平均を表す)にて診断されます(図1)。 主に糖尿病には2つのタイプがあり、❶インスリンを合成・分泌する膵臓のランゲルハンス島β細胞が自己免疫により破壊され、インスリンが枯渇する1型糖尿病、❷インスリン分泌低下や、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい)を来す複数の遺伝因子に、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子、加齢が加わり発症する2型糖尿病に分けられます。我が国ではおよそ90〜95%程度を2型糖尿病が占めています。

図1 糖尿病の臨床診断のフローチャート

平成28年「国民健康・栄養調査」(図2)では、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1000万人(合わせて約2000万人)と推計されています。年齢が高いほど糖尿病有病者の割合が高くなる傾向にあります。当院に通院、入院される糖尿病患者さんも特に後期高齢者(75歳以上)の割合が増加傾向です

図2 糖尿病患者数の状況

糖尿病の合併症

糖尿病自体は軽度であれば特に自覚症状がないことが多く、検診等で血糖高値を指摘されない限り、病院受診することはなく、知らないうちに合併症が進行している場合があります。

高血糖が持続すると、全身の血管に傷がつくことにより、動脈硬化が進行します。血管合併症には「きのこ」があります。細い血管に起こる合併症:細小血管障害(「しめじ」:神経、眼、腎臓)、太い血管に起こる合併症:大血管障害(「えのき」:壊疽、脳卒中、虚血性心疾患)が代表的です(図3)。また悪性腫瘍(癌)も糖尿病がない人と比べて、罹患するリスクが高くなることも報告されています。

図3 糖尿病の血管合併症「きのこ」

糖尿病と認知症

認知症の代表的な病型として❶アルツハイマー型認知症、❷血管性認知症があげられます。❶アルツハイマー型認知症とは脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積することにより、神経細胞が破壊、減少することにより認知症を起こす病気です。アミロイドβの分解にはインスリンを分解する酵素が関与しており、糖尿病がありインスリンを分解する酵素が不足すると、アミロイドβが分解できずに脳に蓄積するため、認知症の発症リスクが高まります。また❷血管性認知症は脳梗塞(脳の血管が閉塞する)、脳出血(脳の血管が破れる)により、脳の神経細胞が死滅し、脳の働きが障害を受け発症するものであり、糖尿病による血管障害が原因となりえます。

また糖尿病の治療に伴う、内服薬やインスリンにより低血糖(一般的には血糖値70mg/dL以下)が起こることがあり、低血糖症状は(図4)に示す症状が一般的には見られますが、高齢者や認知症患者では低血糖の症状がはっきり表れないことも多く、対処が遅れると、意識障害を来し、深刻な後遺症を残すことがあります。さらに重症価血糖を起こすと脳の神経細胞にダメージを与え、認知症の発症リスクが高くなると報告されています。

図4 低血糖の症状

年齢、認知症、持病を考慮した糖尿病治療

細小血管障害に関しては血糖コントロールを厳格に行う(HbA1cを可能な限り下げる)ことが発症予防に重要とされており、HbA1c7%未満を目標とすることが推奨とされています。一方で厳格なコントロールを行うと低血糖が増加し、特に大血管障害が進行した例では、不整脈や心筋梗塞等を誘発し、死亡リスクが増大することが研究で明らかとなってきました。

また先項でお話ししたとおり、高齢者、認知症患者では低血糖のリスクが高いため、高齢者に関しては、現在は認知症の程度、ADL(寝たきり、自立)、基礎疾患(持病)、治療薬の種類を考慮した血糖コントロール目標が個別に日本糖尿病学会からも示されています(図5)。

糖尿病治療はここ数年で劇的な進歩を遂げており、治療薬は作用機序から血糖降下作用が弱いもの、強いもの、体重減少効果があるもの、臓器保護効果があるものと多岐に渡ります。当院の糖尿病外来でも患者様の年齢、全身状態、基礎疾患を念頭に、血糖コントロールの目標値を設定のうえ、患者さん個々に適した治療法を提案させて頂いています。

図5 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)

当院の特徴

当院では日本糖尿病学会糖尿病専門医(3名)に加え、糖尿病に関して高度でかつ幅広い専門知識をもち、患者の糖尿病セルフケアを支援する、糖尿病療養指導士(CDEJ)が多数在籍しています。この資格は一定の経験を有し試験に合格した看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士に与えられるものです。そのため多職種で連携しながら、患者さんをサポートする体制が整っています。特に当院は多数の関連高齢者施設、介護医療院を有しており、高齢者糖尿病患者さんの診療経験が豊富です。糖尿病診療でお困りの患者さんやご家族、近隣医療機関の先生方がいらっしゃいましたら、ご気軽に当院へ相談していただけると幸いです。

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