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特集・コラム

新型コロナウイルス感染症について 原土井病院 総合診療科 医師 加勢田 富士子

1.新型コロナウイルスとは

2019年12月に中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症は全世界に広がっています。日本国内でも2020年3月下旬より流行し、新型コロナウイルス感染症のニュースを目にしない日はありません。これを読んでくださっている皆様も日々感染対策に取り組まれていることと思います。
これまでにヒトに感染するコロナウイルスは6種類知られており、このうち風邪の原因になるものが4種類あります。これとは別に重症の肺炎を起こすコロナウイルスは2種類あり、2002年に中国広東省から広まったSARS(重症急性呼吸器症候群)と2012年にアラビア半島から広まったMERS(中東呼吸器症候群)です。今回の新型コロナウイルスは3つ目の肺炎を引き起こすコロナウイルスです。
新型コロナウイルスはヒトからヒトへと感染していきます。1人の感染者から平均2人程度に感染すると考えられ、これはインフルエンザと同程度です。ただし、全く感染させない人もいれば、特に空気の淀んだ閉鎖環境では1人から複数人に感染させ、クラスター(集団感染)を発生させることもあります。感染した人が咳やくしゃみ、会話などで放出した飛沫が、口、鼻、目の粘膜に付着することによって感染する「飛沫感染」が主体と考えられています。また、感染した人から出る痰や鼻水を直接触る、もしくは痰や鼻水で汚れた物を触ることで感染する「接触感染」も起こります。新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するとされています。その他、換気の悪い閉鎖空間に人が密集しているような状況では、エアロゾルという飛沫よりも小さなウイルスを含む粒子を吸い込むことによって感染することも知られています。

2.新型コロナウイルスの症状・治療

感染してから症状が出るまでの期間(潜伏期)は1〜14日間で、だいたい5日程度で発熱や咳、のどの痛み、鼻水、頭痛、だるさなどの風邪症状が出てきます。嗅覚や味覚の異常が出てくることもあります。約8割程度の人はそのままよくなりますが、2割の人は症状が出てから1週間程度で肺炎症状が悪くなり入院が必要となります。(図1)

図1 新型コロナウイルス感染症の経過


図2 年齢別にみた新型コロナウイルス感染症の死亡率

50歳代までは重症化は少ないですが、60歳代から年齢が高くなるにつれて致死率も高くなります(図2)。

図2 年齢別にみた新型コロナウイルス感染症の死亡率

慢性腎臓病や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、心不全や冠動脈疾患といった持病をお持ちの方は重症化するリスクが高いことが知られています。
新型コロナウイルス感染症に対する抗ウイルス薬として確立されたものは現在のところありませんが、治験や臨床研究が進められています。レムデシビルという点滴薬が日本でも新型コロナウイルス感染症に対し承認されましたが、主に重症の方を対象とした薬であり、副作用のリスクもあるため、広く使える特効薬とはいえません。現時点においては、発熱や咳などの症状を緩和する目的の対症療法が中心となっており、解熱剤や鎮咳薬の投与が行われています。また現在有効で安全が確認されたワクチンもありません。そのため特にご高齢の方は感染しないように普段の生活から気をつけることが最も重要です。

3.新型コロナウイルスに感染しないために

新型コロナウイルスが流行している原因としては、感染しても無症状の人が約3割程度いて、その人から他の人へ感染するということ、また症状が出る人であっても症状が出てくる1〜2日前から他の人へ感染させるということが挙げられます。 つまり、無症状であったとしても新型コロナウイルスに感染している可能性があるということです。そのことを頭に置いて、人と近い距離(2m以内)でお話する時はお互いにマスクを着けるようにしましょう。マスクを着けることによって飛沫が飛ぶのを防ぐことができます。 ただし高温多湿な状態でマスクを着けると、心拍数や呼吸数、体感温度が上昇し、熱中症の危険性が高くなります。屋外で人と2m以上の距離を保てる場合にはマスクは外すようにしましょう。またクラスター(集団感染)を起こさないために、「3つの密」と言われる換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面を避けるようにしましょう。 新型コロナウイルスは汚染された手からも感染しますので、手で目、鼻、口を触らない、こすらないようにしましょう。手はこまめに石鹸で洗うもしくは消毒するようにしましょう。新型コロナウイルスは熱、アルコールに弱いことが知られています。70%以上のエタノールが望ましいですが、60%台のエタノールによる消毒でも一定の有効性があるという報告があります。
4月〜5月の流行時には緊急事態宣言が発令され、外出自粛、県境を越えた移動の制限、学校の休校、イベントの制限、施設の利用制限などが行われました。これにより感染者は減少し、一定の効果をあげることができました。しかし、ずっと自粛や制限を続けるわけにもいきません。新型コロナウイルスと共存するwithコロナの時代を生き抜くために「新しい生活様式」が提唱されています(図3)。新型コロナウイルスに感染しないために、できることから実行していきましょう。

図3「新しい生活様式」の実践例

4.当院の新型コロナウイルス感染症に対する取り組み

当院では病院に入られる方には全員検温と風邪症状の有無確認をさせていただき、マスク着用をお願いしています。熱のある方、咳などの風邪症状がある方は通常外来のC棟3階ではなく、C棟1階で診療させていただいています。
診察、検査の結果、新型コロナウイルス感染症が疑われる方は福岡市医師会のPCRセンターをご紹介しています。入院が必要な方にはCTを撮影し、肺炎があるかどうかを確認するとともに、必要時は新型コロナウイルスPCR検査を行っています。4月より発熱・肺炎患者様専用の病棟を設けておりますので、新型コロナウイルス感染症が否定されるまではそちらに入院していただき、医療スタッフは院内感染を防ぐために感染対策を行っています。また8月からは県の要請を受け、介護医療院開設のため休眠病棟となったR5病棟へ新型コロナウイルス感染症患者の受け入れも開始しております。
今後も職員一同感染に十分注意しながら診療に当たる所存です。皆様にも感染状況に応じて面会を制限するなど、ご不便をおかけしておりますが、何卒ご協力をよろしくお願いいたします。

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