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特集・コラム

スマートウォッチ外来について 原土井病院 副院長・心不全センター長 丸山 徹

不整脈とは

心臓の拍動が不規則になる状態を不整脈といいます。不整脈にはさまざまな種類があります。急に動悸が始まり不快な思いを繰り返す不整脈や、自覚症状はないのに毎年健康診断で指摘されて気になっている不整脈、少しの時間でも起きると命にかかわる危険な不整脈までさまざまです。病院を受診した際に心電図で確実に記録できればいいのですが、病院にいる時に限ってなかなか見つからないのが不整脈です。今回は不整脈でお困りの方に病院では最近どのように対応しているのかをご紹介しましょう。

まれな不整脈

病院でいつ心電図をとっても不整脈が認められる場合は定期的に経過を観察しながらお薬による治療や生活指導を行います。しかし普通の心電図を記録しても不整脈が見つからない時には24時間心電計を付けて頂く流れになります。これにより病院では起きなくても運動中や食事中、睡眠中に起きる不整脈をとらえることが出来ます。24時間心電計は少々うっとうしい気もしますが、最近は非常にコンパクトになりシャワー浴が出来るタイプや1週間連続記録ができるタイプもあります。しかし不整脈は月に一回くらいしか起きないこともあります。そのような場合には不整脈の症状が出た時に自分で心電図を記録できるイベントレコーダーを当院ではお貸ししています(図1)。

図1:イベントレコーダー

外来でイベントレコーダーを患者様にお貸しして自身で心電図を記録されたら1、2か月後の再来に持ってきて頂きます。イベントレコーダーを見ながら不整脈があるかないか、治療が必要な不整脈かどうか、さまざまなアドバイスができます。治療につながり動悸が消えることも多く、治療が必要ない場合でも動悸の原因が分かれば安心につながります。当院ではイベントレコーダーを保険診療として活用しています。

スマートウォッチの活用

最近はスマートウォッチを利用されている方をよく見かけます。スマートウォッチは多機能になり消費カロリーや血中酸素濃度、心拍数、血圧を測定することもできます。スマートウォッチを健康管理や睡眠管理に役立てている方は多いと思います。より多機能なスマートウォッチでは心電図も記録できます(図2)。
スマートウォッチはいつも身に着けていますので心電図を記録して不整脈の検出に役立てようというアイデアが出るのは当然です。不整脈かな、と思ったら静かに座ってスマートウォッチを付けている腕を机や膝の上に置きます。心電図アプリを立ち上げて反対の手でスマートウォッチの本体を親指と人差し指でつまみながら人差し指をリューズ(デジタルクラウン)にのせます(押す必要はありません)。そのまま静かにすると心電図が30秒間記録されます。(※)
記録された心電図はPDFレポートとして保存しておきましょう。現在、わが国で家庭用医療機器として認証されているスマートウォッチは1社だけです。心電図が記録されるとコメントも表示されますが、コメントはやはり病院で確認される方が安心で確実です。

図2:スマートウォッチ

心房細動とは

図3:心房細動と脳梗塞の関係 心房細動という脳梗塞につながることもあるやっかいな不整脈があります。自覚症状にとぼしく病院で検出するのがむつかしい不整脈です。脳梗塞になった後に初めて心房細動がみつかることもあります(図3)。しかし最近ではお薬やお薬以外の治療法が進んでいますので、心房細動は早めに発見して適切に管理されれば日常生活にも運動にも支障はありません。病院に来院されると患者様は自動血圧計で血圧を測ります。血圧と同時に脈拍数が表示されますが、脈拍数が常に「エラー」、「測定不能」と表示されれば心房細動の可能性が高くなります。米国ではスマートウォッチを使って一般の方を対象とした心房細動を検出する大規模な臨床研究が行われました。その結果、スマートウォッチによる心房細動の検出能力の高さが浮き彫りになりました。4万人以上の市民がこの臨床研究に参加したというのも米国らしいですね。今後スマートウォッチを用いた臨床研究はさまざまな分野で続くと思われます。

スマートウォッチ外来

図4:心房細動週間 わが国でも最近はスマートウォッチの心電図機能を利用してスマートウォッチ外来を行っているクリニックや総合病院が多くなりました。スマートウォッチ外来ではスマートウォッチの販売や貸し出しは行いません。個人情報が含まれるスマートウォッチを預かることもしません。心電図機能のあるスマートウォッチを既にお持ちの方を対象としています。スマートウォッチの心電図記録をプリントアウトしてクリニックに持参して頂くとそれを検査データとして通常の診療で利用させて頂くシステムが多いようです。私の外来でもスマートウォッチで記録した心電図をプリントアウトして持ってきて頂ければいつでも相談に応じています。
日本不整脈心電学会では3月9日を「脈の日」、3月9日から15日までを「心房細動週間」としています(図4)。この期間中には公開講座やセミナーも開催されます。心房細動になると脳梗塞だけでなく心不全や認知症にもなりやすくなります。高血圧や糖尿病、肥満、喫煙、飲酒、睡眠不足、ストレスなども心房細動の原因ですから心房細動は生活習慣病の一つと言えます(図5)。この心房細動週間にぜひご自身の脈をチェックして生活習慣を見直してみて下さい。

図5:心房細動が起こる原因

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