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特集・コラム

心不全センターを開設しました 原土井病院 副院長・心不全センター長 丸山 徹

原土井病院の丸山 徹と申します。当院ではこれまでも高齢者の循環器診療を積極的に行ってまいりましたが、この度、心不全センターを開設しました。心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義される通り、ほとんどの心臓病が関係します。
心臓のポンプ機能が低下する心不全は高齢者に限った問題ではありません。しかし高齢者の心不全は、❶非典型的で重症化してから見つかる例が多く、❷フレイルやサルコペニアを合併したり、多臓器の機能が低下(慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、貧血など)している場合が多く、❸お薬の安全域が狭いために治療が難しい特徴があります。また高齢者は体液量の調節域も狭く心不全の薬物治療が年間を通して通り一辺倒に行かない場合があります。脱水に注意すべき夏場と風邪気味でうっ血しやすい冬場ではお薬をきめ細かく調節する必要があります。心不全の高齢者はひと夏ひと冬を越すのも注意しなければなりません。
当院の心不全センターが目指すのは、心不全の重症化予防とフレイルやデコンディショニング*の予防です。

*デコンディショニング
体を動かさないことによって起こる異変の総称。筋肉の萎縮や筋力・肺活量の低下、立ちくらみやふらつきなど。

❶ 重症化予防

心不全が悪化する場合は何か原因があることがほとんどです。心労や睡眠不足、怠薬や塩分の摂り過ぎ、風邪で熱を出すことなどです。これらのよくある原因による心不全の増悪は、早めに入院して適切な治療を行えば重症化せずに早期退院出来ます。また心不全の高齢者は心不全以外に脱水や食思不振、小出血や電解質のアンバランスを起こすこともありますが、これらも早めに対応すれば大事に至らずに済みます。

❷ フレイル・デコンディショニング予防

フレイルを併せ持つ心不全の高齢者は再入院されるケースが多く、心不全の治療も難しくなります。また転倒が多くなり外傷や出血で入院することも多くなります。フレイルがあると社会的に孤立したり、心不全治療が中断することもあります。当院に心不全入院される際にはフレイルの程度や栄養状態を評価して、心不全とフレイルの連鎖を断ち切る適切な栄養介入とリハビリテーションを行っています。また入院が長くなると筋力も低下します。デコンディショニング予防のために早期離床を心がけ、多職種連携で退院支援を行い、再入院抑止を目指しています。

心不全センターでは開業医や在宅医の先生方のご要望に応じて、必要な検査を行ったり、運動処方を提供してリハビリテーションを行ったり、お薬を調整したり、増悪期には早期入院により重症化予防を図ったり、食事指導を行ったり、患者さんの背景や重症度に応じてさまざまなニーズにお応えしたいと考えております。
今後とも原土井病院の心不全センターをどうか宜しくお願い申し上げます。

CPX(心肺運動負荷試験)体験レポート 当院の職員が限界までエルゴメーターを漕いでみた!

当院では2021年よりCPX(心肺運動負荷試験)を導入しています。NASAの宇宙飛行士やプロアスリートのトレーニングにも取り入れられているこの検査、当院では主に心臓リハビリの患者さんを対象に実施しています。エルゴメーター(自転車)を「もう漕げない!」と思うところまで漕ぐことで、最高酸素摂取量をはじめとした様々なデータの測定が可能となります。
今回は、最近趣味のジョギングをさぼりがちな当院の職員が実際にCPXにチャレンジ!限界までエルゴメーターを漕ぎ続けた結果はいかに!?

❶ 準備

はじめに身長や体重、年齢などの項目をパソコンに入力。
身体には血圧や心電図、呼気ガスを測るための機器を取り付けます。

❷ 検査開始

エルゴメーターを漕ぎ始めます。正確な結果を得るために、漕ぎ始めたら会話はできません。常に一定のペースで漕ぎますが、はじめのうちは軽めの負荷で、時間が経つごとに徐々に負荷が重くなります。

❸ 終了

「もう漕げない!」となったら再度負荷を軽くしてクールダウンの後、終了です。検査技師が終了直後、息苦しさと脚の疲労の程度を尋ねます。

❹ 結果説明

検査機器を取り外してひと段落したら、医師による結果説明です。
CPXでは❶運動耐容能*指標・生命予後指標である最高酸素摂取量、❷有酸素運動をおこなうことのできる脈拍の上限を知ることができます。有酸素運動から無酸素運動へ変化する点を嫌気性代謝閾値(ATレベル)と呼びます。ATレベルでの運動が効率よく脂肪を燃焼し、最も効率の良い運動ができると考えられており、心臓リハビリのガイドラインでも推奨されています。さらに❸運動介入前後の改善の指標にもなります。

* 運動耐容能:どれくらいまでの運動に耐えられるかの限界能力のこと。

❺ お疲れ様でした!

運動療法処方箋をもらって検査終了です。お疲れ様でした!

今回は職員がチャレンジしましたが、本来は心臓リハビリの患者さんを対象におこなう検査となります。具体的には❶急性心筋梗塞、❷狭心症、❸開心術後(冠動脈バイパス術・弁膜症手術など)、❹慢性心不全、❺大血管疾患(大動脈瘤・大動脈解離など)、❻末梢動脈閉塞性疾患の病気を持っている患者さんは心臓リハビリの適応になります。これらの疾患があり、少し動いただけで息切れがあったり、何をするにしても筋力の衰えを自覚する方がいましたら、当院循環器内科までご相談ください。

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