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特集・コラム

骨粗鬆症について 原土井病院 整形外科 藤原 悠子

超高齢化社会が進む昨今、話題の骨粗鬆症について紹介します。
骨粗鬆症とは年齢とともに、骨が脆くなり骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症だけでは特に症状はありません。しかし骨が脆くなると、軽く転倒しただけで背骨(脊椎)や股関節(大腿骨近位部)手首(橈骨遠位端)などが折れてしまいます(骨折)。重症の骨粗鬆症になると、トイレに座っただけで背骨が折れてしまうこともあります。骨折で命を落とすわけではありませんが、骨折治癒にかかる時間は長く、骨折を何度も繰り返してしまうと、寝たきりとなってしまい、認知症が出たり、肺炎を起こしたりして、身体がどんどん弱ってしまいます。
骨の折れにくさ(骨強度)は、7割を骨の密度(骨密度)と残り3割を骨の材質(骨質)で決まっております。骨を吸収する細胞(破骨細胞)、骨を作る細胞(骨芽細胞)、そして骨を構成する細胞(骨細胞)という3つの細胞で調節しています。骨強度を保つためには、破骨細胞が古くなった骨を壊し(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨を作る(骨形成)必要があります。

骨の代謝のメカニズム

年齢を重ねていくと、このバランス機能が下がってしまい、骨を壊す方が強くなってしまい、骨質と骨密度が下がってしまいます。特に女性ホルモン(エストロゲン)は骨強度の維持に必要で、閉経後にエストロゲンがなくなってしまうと、骨密度と骨質が急に下がってしまうので、注意が必要です。 骨粗鬆症の診断にはレントゲン(単純X線)検査と骨密度測定検査を行います。単純X線で脊椎に骨折がないか調べます。腰の痛みがなかなか取れない方の中には『いつの間にか骨折』といって、脊椎の椎体に骨折がある場合があります。骨密度測定検査は超音波エコーなどの簡便な方法がありますが、当院では腰骨(腰椎)と股関節(大腿骨近位部)の二箇所を使用するDXA(Dual-Energy X-ray Absorptiometry)法を行なっております。 この方法が内側の骨の強さ(海面骨量)と外側の骨の強さ(皮質骨)をより正確に測定でき、骨粗鬆症の診断が正確にできます。

骨粗鬆症は予防が非常に重要な病気です。骨を強くするために、カルシウムを十分に摂取するほか、ビタミンD(干し椎茸など)、ビタミンK(海藻や納豆)、リンやマグネシウムも必要です。栄養の摂取以外にも、運動や日光浴も重要になります。最近では若い人たちの過度なダイエットや日焼け防止などで骨粗鬆症予備軍が問題となっています。また妊娠中や授乳中も意識してカルシウムを摂取するようにお勧めしております。
骨粗鬆症の研究が色々と行われており、現在様々な薬剤が開発されておりますので、ここでいくつかご紹介させていただきます。

骨吸収を抑える方法(骨吸収抑制剤)

❶ビスホスホネート

この薬剤は骨に沈着することで破骨細胞が骨吸収する際に破骨細胞に取り込まれ、破骨細胞の活動を低下させます。毎日内服するものから週一回、もしくは月一回内服するものがあります。骨折予防効果が高く第一選択薬として広く使用されております。しかしいくつか副作用があり注意が必要です。胃の粘膜を痛める(上部消化管障害)可能性があり、内服したのち30分程度起きている必要があるため、痛みがあり座れない方は使用できません。また顎骨壊死という、稀に顎の骨が溶けてしまうことがあります。この薬を開始する前には歯科受診して口腔内の状況を確認する必要があります。当院では歯科と連携し口腔内の状況と骨粗鬆症の重症度(骨折のリスク)を歯科医師と相談しつつ骨粗鬆症の治療を進めております。他には長期間使用により非定型骨折という通常と違う形の骨折を起こすこともあります。

❷選択的エストロゲン モジュレーター(SERM)

骨のエストロゲン受容体に結合して作用します。ビスホスホネートと比べると骨密度増強効果は弱いものの骨折防止効果は同じくらいあり、骨質を改善することも分かってきました。顎骨壊死や非定型骨折といった副作用の報告もほとんどありません。しかし、副作用として血栓ができる可能性があり、寝たきりの方には使用できません。

❸抗RANKL抗体

破骨細胞に必須であるRANKLという分子を抑制する抗体で、強力な骨吸収抑制作用を持つため、骨粗鬆症治療だけでなく骨転移や骨巨細胞腫などにも使用されております。半年に一度の注射を行います。顎骨壊死など副作用の報告もあるため、ビスホスホネート同様に開始前に歯科受診が必要になります。効果は強力ですが、休薬すると骨密度は開始前の状態に一気に戻ることが知られており、一度開始すると中止することが難しい薬です。

骨形成を促進する方法(骨形成促進剤)

テリパラチド

骨芽細胞にある副甲状腺ホルモン(PTH)受容体を刺激し、骨形成を促進する薬です。毎日もしくは週1、2回の皮下注射で行い、使用期間が2年間と限定されております。骨折危険性の高い骨粗鬆症に対し用いられます。脊椎の骨折予防には高い効果を示すものの、大腿骨近位部の骨折に対しては骨折予防の有用性は示されておりません。 骨粗鬆症の治療は的確な診断のもと、個々の患者さんにあった治療薬を使用し、定期的な治療評価が大切です。当院でも骨密度測定検査から治療まで行っております。お気軽にご相談ください。

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