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特集・コラム

フレイルとロコモ 原土井病院 副院長・整形外科部長 坂本 央

新型コロナウイルス感染症の患者が中国武漢で初めて確認されてから2年が経過しました。この間、緊急事態宣言などにより活動が制限され、体を動かす機会が減ってしまったという方もいらっしゃると思います。最近テレビや新聞でもロコモやフレイルといった言葉を聞くようになりましたが、活動量の低下はロコモやフレイルの引き金となります。
今回の特集ではこのフレイルとロコモ、ご高齢者に多い整形疾患とその治療についてご紹介します。

ロコモとは

運動器の機能が低下して移動ができなくなった状態をロコモティブシンドローム、略してロコモ、日本語では運動器症候群と言います。運動器とは骨や筋肉、関節のことですが、これらに障害がおこると歩行や階段昇降などの日常生活に何らかの支障をきたしてしまいます。

ロコモの要因

身体を動かすことが少ない生活を送っていたり運動の習慣がなかったりすると、運動器が衰えロコモの状態になります。体重が増えると腰や膝にかかる負担が大きくなりますし、一方、痩せすぎると筋肉が少なくなります(この状態をサルコペニアと言います)が、これらもロコモの一つの状態と考えられています。痩せすぎについては骨粗鬆症の原因にもなります。また「年のせいだから」「どうせ治らないから」と、痛みを放置することは、活動量の減少から運動器の衰えに繋がりますので、ロコモの状態に陥る要因となり得ます。
ロコモかどうかを判断するための方法として、簡単なものから複雑なものまで様々ありますが、今回はご家庭でもできる方法を図1でご紹介します。

図1 7つのロコチェック

フレイルとは

フレイル(虚弱)とは年齢に従って筋力や心身の活力が低下した状態のことです。ロコモもフレイルのひとつの症状と言えます(図2)
「歩く速度が遅くなった」「体重が減った」「筋力が落ちた」といったことがあればフレイルが疑われます。表1にフレイルの定義を示しますので、ご心配な方がおられましたら参考にしてみてください。

図2 フレイル・ロコモ・サルコペニアの関係
表1 フレイルの定義

放っておいたらどうなる?

このような状態を放置すると、骨折や関節疾患のリスクが高くなります。これらの疾患は介護が必要となった原因の2割を占めるという調査報告もあります(表2)

表2 介護が必要となった原因

大腿骨骨折について

ロコモティブシンドロームの代表的、かつ重篤な疾患として大腿骨骨折が挙げられます。
若い人と違い骨が脆くなっていますので、転倒や躓きなど明らかな原因がなくても発症することがあります。ご高齢の方で股関節の痛み、起立、歩行が難しいなどの症状が見られたら大腿骨骨折が疑われますので整形外科にご相談ください。
ここで、当院でおこなっている代表的な大腿骨骨折の手術についてご紹介します。大腿骨骨折の種類としては❶頸部骨折❷転子部骨折❸骨幹部骨折❹顆上骨折があり、の患者さんが大部分を占めます。手術の方法として🅐骨接合術が選択されますが、頸部骨折で転位(ずれ)が著しければ骨接合術では対応できませんので🅑人工骨頭置換術をおこないます。

図2 フレイル・ロコモ・サルコペニアの関係

🅐骨接合術

表1 フレイルの定義

🅑人工骨頭置換術

ご高齢者は複数の疾患をお持ちの方も多く、手術のリスクも若い人に比べると高いですが、当院では麻酔科医、内科医と連携することで安全性を高めています。

退院に向けて

大腿骨骨折の術後は翌日からリハビリテーションを開始します。まずは可動域訓練、その後速やかに起立訓練を実施し、歩行機能の獲得を目指します。少し話は逸れますが、ロコモの代表的な疾患として、大腿骨骨折のほかに脊椎圧迫骨折があります。明らかな原因がなくても発症するので「いつの間にか骨折」とも言われます。症状は背中の痛みや体動困難などです。大抵の場合は手術を要しませんが、回復には大腿骨骨折と同様、早期のリハビリが鍵となります。発症前の生活に戻るために、当院ではリハビリテーション部や栄養科、ソーシャルワーカーといった多職種でサポートをおこなっています。

おわりに

当院では昨年6月から高齢者疾患をテーマとした勉強会「フレイル・ロコモフォーラム」を開催、多くの医療、介護従事者の皆様にご参加いただいています。ご興味のある方はお気軽に当院患者支援センター092-691-3886)までお問い合わせください。
しっかりと食事を摂り活動的な生活を送ることが、フレイルやロコモの状態に陥らないためには大切です。しかしご高齢者で痛みがあったり、体を動かすことができない状態が続いたりする時は我慢せず、できるだけ早めに当院整形外科、またはお近くの整形外科を受診してください。

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